2008年01月21日

人類は衰退しました 2

images4.jpg 人類は衰退しました 2
 田中 ロミオ
 小学館 ガガガ文庫 ガた1-2(2007/12/23)
 ISBN 9784094510443
 ¥630(税込)

ゲームのシナリオライターの中で、という限定的な条件下では最も好きな文章を書く田中ロミオの小説デビュー作。
ロミオ節と呼ばれる独特の言い回し(注:下ネタを多数含む)がコアなファンを引き付けて止まないのだが(思えばCROSS†CHANNELを渡してくれたのはロミオ節に大爆笑していたZONA氏だったな)、流石に小説ともなると中学生、高校生の読者(及びその保護者)を意識してかその辺はぐっと控え目に抑えてある。
その分、ストーリーや世界背景の妙がストレートに伝わって来て(と言っても其処は流石に田中ロミオ、読み進めて行くと混乱するような複雑な筆致は健在である……ただ単に読解力の問題なのかもしれないが)私としてはこちらの方が好きだな。

来るべき未来、加速度的な人口減少の結果、人類は万物の霊長たる地位を明け渡し、楽隠居的生活でのほほ〜んと、種としての衰亡の時を迎えていた。
そして新たな人類として地球上に君臨するのが、平均身長10Cm、3頭身のコロボックル「妖精さん」なのである。
しかもこの妖精さん、どうやら人知の及び付かない存在であるらしく、とても高度な知的種族である事以外はその生態や行動原理は殆ど不明。
旧人類の科学や物理法則を超越したオーバーテクノロジーで以って全く無意味な(旧人類にとってだが)騒動を巻き起こした挙句離散して行くという……そんな世界で新旧両人類間の調停役として働く主人公(現在のところ名無し)の折衝と称した介入、及び発生する事件を描いたコメディ。
大きく分類すればSFって言って良いんだろうなぁ、児童文学調ではあるけれども。

一晩でスクラップの山がメトロポリスに変化していたり、ペーパークラフトで生命の進化を再現してみたり(しかも紙工作自体が自立する!)、人類の知性を粉末の成果材料に変化させるスプーンや食べると必ずタイムスリップするバナナを作ってみたり。
あっれーおっかしいなぁ、どれも科学的物理学的視点から考察するととんでもない代物なのに、如何してこんなにほのぼのしてしまうんだろう?
と、まぁ全編が緩い感じで進んで行くのだが、これはこれで素晴らしく素敵な作品であると思う。

もうラノベの新シリーズを買うことは無いと思っていたんだけどなぁ……これはある意味別格。
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2007年09月30日

サクリファイス

31940888.jpg サクリファイス
 近藤 史恵
 新潮社(2007/8/30)
 ISBN 9784103052517
 ¥1.575(税込)
 

小説に関しては文庫化するのを待つのが常なんだけれど、この作品に関しては果たして文庫化されるか疑わしいので、私としては異例のハードカバー購入。
この前に買ったのは佐藤賢一の「ジャンヌ・ダルクまたはロメ」だから実に3年半振りの椿事である(大袈裟)

それにしてもロードレースを主題にした小説、って時点で異色の存在である事は間違い無いのだが、それがまたミステリーって形式を採っているのが興味深い。
と言うか、「茄子」や「シャカリキ!」「Over Drive」の様なコミックであればレース展開や練習風景、人間模様なんかもしっかりと作品になるのだろうけれど、活字のみの小説ではレースの描写をした所で、それが一体どれ程の量になろうか。
プロ選手はコースを時速40Km前後で走り抜けるけれど、レース時間は4時間〜6時間にもなる。
書籍映えするシーンなんてその中のほんの数パーセントにしか過ぎないから自然レース自体の描写は限定的なものになる。
個人的なアニメ作品評価の歴代No.1に輝く「茄子 アンダルシアの夏」でさえたったの47分なのだ。
実際この作品を文庫化すれば随分薄い本になるんじゃないかなと思う……まぁ言い換えれば見応えのある場所は確実に押さえているって事にもなるんだけれど。

で。
ロードレースの知識がある私にとっては色々な光景が目に浮かぶ様で、しかも主人公が私の大好きなファビオ・サッキやエディ・マッツォレーニの様なタイプの選手、所謂アシスト(ただのアシストではなくエースが居なくなればレースを掻き乱す存在になれる所が格好良い、尤もマッツォレーニはジロで大活躍して殆どエース格だったけれども)である所に共感を覚えざるを得ない。
成れるものならそんなタイプになりたいけれど、余りにもだいそれている様でそんな事は決して言えないが。
話が逸れたが、筆致は流れる様にスムーズ、トリックは想像を超える、読後感は爽やか、と個人的には大プッシュしたい作品だが、自転車競技を全く知らない人にとっては如何だろうか。
作品の随所にレースについて初心者のささやかな疑問が挟まれているけれども……誰かに読ませて感想を聞きたい所。

何にせよ素敵な作品である事には間違いないので、機会があれば一読をお薦めしたい。
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2007年09月27日

長いお別れ

01982851.jpg 長いお別れ
 レイモン・チャンドラー/著 清水 俊二/訳
 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫HM7-1(1976/4/30初版)
 ISBN 9784150704513
 ¥882(税込)
 

本陣殺人事件を読んだ時、次は金田一シリーズかクイーンの国名シリーズにしようと思っていたのだが、結果的にはチャンドラーを先に読んでしまった。
村上訳のロング・グッドバイでも良かったのだけれど、文庫サイズの方が持ち運びには便利かなと。
ガチガチの固ゆで卵に挑むのはこれが初めてかもしれない。

まぁそもそも何で長いお別れを読もうなんて思ったかと言うと、バーテンダーの中に出て来た「ギムレットには早過ぎる("I suppose it's a bit too early for a gimlet,"he said)」という台詞が気になっていたからで……ギムレット自体はドライ過ぎて苦手なんだけど。
で、肝心の感想なのだが、面白いんだけれどもそれ以上の感想が出て来ないんだよなぁ。
いや、面白いんだよ?
主人公フィリップ・マーロウの生き様とか、テリー・レノックスとの奇妙な友情とか、リンダ・ローリングとのロマンスとか、最後の最後にやってくるシスコ・マイオラノスだとか。
見所は一杯あるし、淡々と綴られているのにちゃんと山あり谷ありだし、確かに一寸中弛みしそうな所はあるんだけど小説としての完成度は高いよね。
それに要所要所に現れる名台詞を浚うだけでも一読の価値はあると思う。
しかし、この本を片手に語り合おうって気にはならないのは私に向いていないからなんだろうか。

合うか合わないかの判断は他のチャンドラーを読んでからにしようと思うけれど、それにしても此処まで微妙な長いお別れの書評は他に存在しないんじゃないかね?
posted by Yatsumi at 14:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月04日

涼宮ハルヒの分裂

31855981.jpg 涼宮ハルヒの分裂
 谷川 流
 角川書店 角川スニーカー文庫(2007/4/1)
 ISBN 9784044292096
 ¥540(税込)

何だかんだで月台氏から今まで全部借りてしまっていたりするので、書かない訳には行くまい。
あくまで個人的な意見なのでハルヒ好きの諸兄は読んでも怒らないように。

えーと分裂、分裂ね……驚愕も読まないときっと正確な所は言えないのだろうが一応。
面白いとは思うのだけれども特別好きでは無いというのが正直な感想、それは分裂でも変わらなかったかな。
作品を一言でまとめるならば「いつの間にか巻き込まれ妄想が蔓延る」だろう。
ハルヒシリーズが面白い、否、凄いのは、ハルヒが神様的な存在であり、或いは未来人や宇宙人や超能力者が存在するという事実に対する考証や矛盾を否定せず、一つ一つ事件として描いて行く(潰して行くと言い換えても良い)点にあると思う。
今回の佐々木さんが正しくその例で、これは「別にハルヒが神様でなくても良いんじゃね?」という疑問から生まれたストーリーなんだろうな。
以前私は「実はキョンこそが神様的存在で、全ての出来事はキョンが無意識的にそれを望んでいるから」という仮説を立てた事があるが(これを否定する材料は現段階では何処にも存在しないのだ)、詰まらないから却下と一刀両断された覚えがある。
まぁ確かにそれは極論だと思うけれども、巻数を増す毎に手を変え品を変え様々な可能性を提示して来る(物語になった時点で事実に変わるのだが)谷川流の筆致はただただ凄いと思うばかり。

あと特筆すべきは、この巻からキョンがSOS団を積極的に肯定し始めたという事。
良い変化なのか悪い変化なのかは知らないけれど、あれだけハルヒの行動に巻き込まれるのを毒づいていたキョンが1年経つとこんなにも変わるのかと思うとそれもまた面白い話である。

後は……キャラ萌えとかこの作品では一切感じないんだけれど、佐々木さんは良い性格してるわ。
それから分裂後のテキストは卒論を思い出してしまい少々トラウマチックに。
そんな所かな、続きにも細々と期待。
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2007年07月22日

本陣殺人事件

19890533.jpg 本陣殺人事件
 横溝 正史
 角川書店 金田一耕助ファイル2(1978/4/30初版)
 ISBN 9784041304082
 ¥660(税込)

村上春樹訳のキャッチャー・イン・ザ・ライを読んだ後はチャンドラーの長いお別れを読もうかと思っていたのだが、同じ探偵小説なら横溝正史を読み進めようかと。

推理小説が好きか嫌いかと問われると、決して好きなジャンルでは無い。
いや、まぁコロンボもポアロもホームズもレーンも金田一も好きなのだが(因みに綾辻行人や有栖川有栖、内田康夫、法月倫太郎なんかは読んだことが無い、赤川次郎と江戸川乱歩は少しだけ読んでいる)、例えば推理にしろトリックにしろ幾らでも後付が出来る様な気がして何だか面白くないのだ。
……そんな事を言う奴はクイーンの国名シリーズでも読んでろ!と言われそうだが、うん、金田一の有名所を読み終わったらそうしよう。

で、金田一初登場の本陣殺人事件及び、車井戸はなぜ軋る、黒猫亭事件の3作品が収録された1冊。
ぶっちゃけ読者諸君は如何だったかとか言われても解るかいこんなもん、ってな具合で推理なんて出来る筈も無く。
それでも金田一はサクサク読み進められるから好きだなぁ。
さて、犬神家→本陣と読んで来て、次は八つ墓村にしようか獄門島に戻ろうか。
posted by Yatsumi at 20:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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